信濃の国


信濃の国は十州に 境連ぬる国にして
そびゆる山はいや高く 流るる川はいや遠し
松本 伊那 佐久 善光寺 四つの平は肥沃の地
海こそなけれもの沢に 万足らわぬ事ぞなき

四方にそびゆる山々は 御嶽 乗鞍 駒ヶ岳
浅間はことに活火山 いずれも国の鎮めなり
流れ淀まず行く水は 北に犀川 千曲川
南に木曽川 天竜川 これまた国の固めなり

木曽の谷には真木茂り 諏訪の湖には魚多し
民のかせぎも豊にて 五穀の実らぬ里やある
しかのみならず桑採りて 蚕養いの業のうち開け
細き世すがも軽からぬ 国の命を繋ぐなり 

尋ねまほしき園原や 旅の宿りの寝覚の床
木曽の桟かけし世も 心して行け久米路橋
来る人多き筑摩の湯 月の名に立つ姥捨山
著き名所と風雅士が 詩歌に詠てぞ伝えたる

旭将軍義仲も 仁科五郎信盛も
春台太宰先生も 象山佐久間先生も
皆この国の人にして 文武の誉れたぐいなく
山と聳えて世に仰ぎ 川と流れて名は尽ず

吾妻はやとし日本武 嘆き給ひし碓氷山
穿つトンネル二十六 夢にも越ゆる汽車の道
道一筋に学びなば 昔の人にや劣るべき
古来山河の秀でたる 国に偉人のある習い 




一番と四番のメロディー(MIDIファイル、7.5KB)

ヤマハのMIDPLAGを利用しています
お手持ちのプレーヤーで演奏します。

その他

MIDIファイル(7.5KB)



WMAファイル(133KB)

(雑音が多いのですが、
音のイメージは再現されています)

 1899年(明治三十二)、長野師範学校(現信州大学教育学部)教諭の浅井洌(きよし、1849〜1938)が作詞、翌1900年に同校教諭の北村季晴(すえはる、1872〜1930)が曲をつけて、当時の師範学校の行事などで歌われました。学生が教師として県下に赴任して全県に広がり、連綿と歌い継がれたことで、1968年(昭和四十三)5月20日には県歌として制定されました。

 長野県の唱歌教育推進のために信濃教育会の意向を受けた同校教諭の依田弁之助が、同僚の浅井に作詞を依頼して作曲しましたが人気はなかったようです。東京音楽学校で依田の2年後輩だった北村が青森県から同校に招聘され、浅井の詩に深い感銘を受けて作曲したところ、多くの生徒に歌われるようになり、運動会の女子部生徒の遊戯にも使われました。

 軽快で親しみやすいメロディーが印象的で、四番のみが穏やかな調子の詠唱として全体のバランスに工夫が凝らされています。作曲した北村は東京に生まれ、東京音楽学校を卒業後にしばらく教師をしてから本格的な音楽家として一家を成しました。1901年2月には師範学校を退職していますから、長野滞在は一年ほどの短い間でしたが、まことに大きな足跡を残したものだと思います。

 背景画像は更埴市の千曲橋から見た冠着山(かむりきやま)と千曲川です。冠着山は姨捨山、更級(更科・さらしな)山とも呼ばれてきました。




信濃の国(しなののくに)

 信濃の国は十州(じっしゅう)に
 境連(さかいつら)ぬる国にして
 聳(そび)ゆる山はいや高く
 流(なが)るる川はいや遠し
 松本 伊那(いな) 佐久(さく) 善光寺
 四つの平(たいら)は肥沃(ひよく)の地
 海こそなけれもの沢(さわ)に
 万足(よろずた)らわぬ事(こと)ぞなき

 四方(よも)にそびゆる山々は
 御嶽(おんたけ) 乗鞍(のりくら) 駒ヶ岳
 浅間(あさま)はことに活火山
 いずれも国の鎮(しず)めなり
 流れ淀(よど)まず行(ゆ)く水は
 北に犀川(さいがわ) 千曲川(ちくまがわ)
 南に木曽川(きそがわ) 天竜川(てんりゅうがわ)
 これまた国の固(かた)めなり

 木曽の谷には真木(まき)茂り
 諏訪の湖(うみ)には魚(うお)多し
 民(たみ)のかせぎも豊にて
 五穀(ごこく)の実らぬ里やある
 しかのみならず桑採(と)りて
 蚕養(こが)いの業(わざ)のうち開け
 細き世すがも軽(かろ)からぬ
 国の命を繋(つな)ぐなり

 尋(たず)ねまほしき園原(そのはら)や
 旅の宿りの寝覚(ねざめ)の床(とこ)
 木曽の桟(かけはし)かけし世も
 心して行け久米路橋(くめじばし)
 来る人多き筑摩(つかま)の湯
 月の名に立つ姥捨山(おばすてやま)
 著(しる)き名所と風雅士(みやびお)が
 詩歌(しいか)に詠(よみ)てぞ伝えたる

 旭将軍義仲(あさひしょうぐんよしなか)も
 仁科五郎信盛(にしなのごろうのぶもり)も
 春台太宰(しゅんだいだざい)先生も
 象山佐久間(ぞうざんさくま)先生も
 皆この国の人にして
 文武(ぶんぶ)の誉(ほま)れたぐいなく
 山とそびえて世に仰(あお)ぎ
 川と流れて名は尽(つき)ず

 吾妻(あずま)はやとし日本武(やまとたけ)
 嘆(なげ)き給(たま)ひし碓氷山(うすいやま)
 穿(うが)つトンネル二十六
 夢にも越ゆる汽車の道
 道一筋(みちひとすじ)に学びなば
 昔の人にや劣(おと)るべき
 古来(こらい)山河の秀でたる
 国に偉人のある習(なら)い




更級の風景